「うちのテレビのスピーカーが壊れちゃってさ」
「またかよ?これで何度目だ?」
休み時間、私は隣の席の男子と話していた。
彼は機械に強く、クラスの人からしょっちゅう機械の修理を頼まれていた。
「もうすぐ10回くらいになるかな。」
「それはもう買い換えた方がいいだろ。」
呆れ顔で彼は言った。
事実うちのテレビは20年以上前の年代物だ。
「そんなこと言われても完全に壊れない限りは買い換えられないんだよ」
うちは貧乏だからね、と苦笑する私を見ながら彼は言った。
「買い換える方法はあるぞ。」
「へ?」
私は目を丸くした。
「だからさ、完全に壊れりゃ買い換えるんだろ?だったら壊せば良いだけじゃねぇか。」
当たり前の様に彼は言った。
「そこまでして買い換えたいとは思わないんだけど。」
「でも買い換えたいんだろ?」
「確かにそうだけど」
当惑する私に彼は言った。
「変えた方がいいぞ。前みたいに音が途中で途切れたり音量がでかくなったりしないで済むしな。」
だから、壊しちまえよ、と言った彼の目を見た途端全身に鳥肌がたった。
「じゃあ今度そうして見るよ」
「おー。」
彼は笑って言った。
結局あれであの話はお開きになったままだ。
ぼんやり考えていると
「**ちゃん、聞いている?」
と少し苛ついた声が降ってきた。
見上げると両手をこしに当ててこちらを不機嫌に見下ろす顔があった。
どうやら弁当は食べ終わったらしい。
「ん、あぁごめん、ちょっとぼーっとしてた。」
「ふぅん」
彼女はそれで納得したらしく、再び会話を再開した。
「でさ、その人がね…。」
私は適当に相づちを打ちながら再び箸を取った。