こんな気の弱い奴が、生きていけるのか。
そんな事を考えるて、眼を閉じ小さく息を付く。
(えみや、早く来てくれよ)
この場にいない、もう一人の幼なじみを小さく恨み、
同時にこれは、使えると、胸の内でほくそ笑む。
そんな内心を悟られぬよう、大袈裟に呆れ返って、縮こまるいずみを見下ろした。
「だが…、」
尚も躊躇ういずみに軽く、肩を竦めて見せた。
「そんなだと、またえみやに女って言われるぞ」
「それは…っ、」
途端に慌てふためく姿を見、続け様に言ってみる。
「うっかり、のらに聞かれたら、それこそ一生からかわれるぞ?」
「…っ、」
益々狼狽えるいずみを見、何とかなったかと安堵する。
あんな重い空気、とてもじゃないが、耐えられない。 それを呼び出したのは、紛れもなく自分なのだが。
それはこの際、気にしない。
にやにやと笑うはやとを見、反撃しようといずみが言う。
「そういうはやとこそ、何時もからかわれているだろう」
途端に苦い顔をして、吐き捨てるように悪態を吐く。
「うるせ。俺は元々彼奴が嫌いなんだよ」
余裕こきやがって。何時かぎゃふんと言わせてやる。
敵意剥き出しなその声に、気付かれぬ様に呟いた。
「…だから、からかわれているのだろう、」
聞こえているのか、居ないのか。
今は怒りで手一杯なのだろう、立て続けに罵詈雑言を並べ立てる。
「大体えみやもえみやだよ。あんなムカつく野郎を親にしやがって」
お陰でこっちは大変だっつの。
無茶苦茶を言い始めるはやとに、小さく異論を述べてみた。
「子に、親は選べぬだろう」
「知ってらぁ!」
くわっと向けられた形相にびくり、と身体を強張らせ、それでも何とか、言葉を紡ぐ。
「救いは、全く似ていないということか」
「あぁ、そりゃな」
でなきゃ腐れ縁続けてねぇよ。
ぶっきらぼうな物言いに、呆れ返って上を見る。
…似てようが、似て無かろうが、さして気にもしない癖に。
「どうした?」
「いいや、別に」
気にしないでくれ。
そう告げれば、そうか、と軽く頷いて。
視線を前に向け呟く。
「にしても、えみや遅っせぇな」
「ああ、そうだな」
そのうちやってくるだろう。はやとに習って前を見る。
やがて駆けてくる彼の人に、一体何から話そうか、そんな事を考えて。